47歳の女性。抗リン脂質抗体症候群の既往がある。右変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術を3日前に受けた。右大腿部から足部まで発赤を伴う腫脹を認め、Homans徴候陽性である。術後に実施した主な血液検査の結果を表に示す。
術後の合併症として考えられるのはどれか。
1→蜂窩織炎は皮膚や皮下組織に細菌が感染し、炎症が起こり、症状として患部の皮膚に赤みや腫れ、熱感と痛みが出現する。また発熱や悪寒、倦怠感などを伴うことも多くある。蜂窩織炎では血液検査にて白血球数やCRP数値の上昇がみられるが本症例はCRPの上昇がみられるが白血球数は正常範囲内である。
2→リンパ浮腫とは乳がんや前立腺がんなどでのリンパ節切除や、放射線治療、薬物療法によって、リンパ液の流れが悪くなることで起こる。がん治療部に近い腕や脚にリンパ液が溜まってむくんだ状態のことをリンパ浮腫という。リンパ浮腫を確定診断できる血液検査はない。本症例はがん治療後でもなく、腫脹も発赤を伴っているため、この選択肢は不適切である。
3→化膿性関節炎とは関節内に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、MRSAなどの細菌が侵入し化膿する病気である。化膿性関節炎の症状としては関節の痛み、腫脹と発赤、熱感が挙げられる。化膿性関節炎の血液検査では白血球数の増加、CRP高値が見られる。本症例の熱感を伴う腫脹は大腿部から足部と広範囲にみられていること、血液検査にて白血球数の増加が見られていないためこの選択肢は不適切である。
4→うっ血性心不全とは心臓の機能低下により、全身に十分な血液を送れなくなり血液のうっ血が起こってしまう状態のことである。症状としては呼吸困難や倦怠感、浮腫などが生じる。うっ血性心不全の血液検査の特徴としてBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の高値が挙げられる。本症例の血液検査ではBNPは正常範囲内である。
5→深部静脈血栓症とは下腹部や太もも、膝を走行する深部静脈に血液の塊ができることである。症状としては主に下肢の腫脹と鈍痛、色調の変化や浮腫がみられる。深部静脈血栓症における血液検査の特徴としてDダイマーの上昇がある。本症例は血液検査にてDダイマーの上昇が見られ、下肢の色調変化と腫脹が見られているため選択肢として適切である。